矯正歯科

矯正の目的は「正しい噛み合わせ」と「美しい歯並び」を得ること

歯列矯正治療の目的は、不自然な位置にある歯を動かして、「正しい噛み合わせ」と「美しい歯並び」を同時につくりだすことにあります。 矯正治療によって、噛む機能が向上すれば、正しい方向への「あご」の発育が起こり、顔全体の感じが良好に変化するなど体の健康およびその容姿にもかかわる大切な治療です。

矯正はⅠ期治療とⅡ期治療に分けて考えます

Ⅰ期治療は骨格の矯正、あるいは悪習癖の矯正であり、乳歯列期や永久歯が生え揃っていない混合歯列期に実施します。主に顎の骨のバランスや大きさを整えて、永久歯がきちんと生え揃うためのスペースをつくります。Ⅱ期治療は、歯列をキレイに並べるための矯正です。Ⅰ期治療で永久歯がきちんと並ぶためのスペースが完成すれば、Ⅱ期治療そのものが不要になったり、健康な歯を抜歯するリスクを回避できたり、部分的な矯正で済むケースが多くなります。

矯正の目的は「正しい噛み合わせ」と「美しい歯並び」を得ること

代表的な不正咬合の種類

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突とは、「出っ歯」とも呼ばれ、上の歯が下の歯よりも過剰に前方に出ている状態を指します。前歯が出ているので、唇が前方に突出して半開きになりやすいのが特徴です。上の歯だけが出ている場合もありますが、顎の骨が前後にズレていることが原因になっていることもあります。

下顎前突(かがくぜんとつ)

下顎前突(かがくぜんとつ)

下顎前突とは、「受け口」とも言い、骨格的に下顎が大きい状態のことを指します。
原因は前歯だけが位置的に前後している場合もありますが、顎の骨格ごと前後にズレていることも多くあります。

開咬(かいこう)

開咬(かいこう)

開咬とは、奥歯でしっかり噛んでも、前歯が噛み合わない状態の歯並びを指します。開咬は歯列によるものと骨格によるものとに分かれ、幼年期の指しゃぶり、舌の使い方や癖、アゴの骨格など様々な原因が考えられます。

叢生(そうせい)

叢生(そうせい)

叢生とは、歯並びがデコボコに重なっている歯の状態を指します。叢生の主な原因は、顎の骨が小さく、歯が並ぶ充分なスペースが無いために、歯が重なりあって生えてくることで起こります。八重歯(やえば)は典型的な叢生の症状です。

過蓋咬合(かがいこうごう)

過蓋咬合(かがいこうごう)

過蓋咬合とは、上の前歯が下の前歯に深く噛み込み過ぎている状態のことを指します。噛み合わせた状態で前から見ると下の前歯があまり見えないのが特徴です。稀に下の前歯が上の前歯と噛み合わずに、前歯の裏側の歯肉を噛み込んでしまっている場合もあります。

交叉咬合(こうさこうごう)

交叉咬合(こうさこうごう)

交叉咬合とは、「すれ違い咬合」とも言われ、左右いずれかの奥歯または前歯が横にずれている噛み合わせのことです。 奥歯でものを強くかんだり、歯をくいしばったりすることができないこともあります。

空隙歯列(くうげきしれつ)

空隙歯列(くうげきしれつ)

空隙歯列とは、「すきっ歯」とも呼ばれ、歯と歯の間に隙間が出来ている歯並びのことを言います。
叢生とは反対に、顎の大きさに対して歯が小さい場合や、歯の数が足りない場合におこりやすい不正歯列です。前歯にこの症状がある場合、非常に目立ってしまいます。

Ⅰ期治療(小児矯正)

小児期に矯正治療を受けるメリット

顎と歯の大きさのアンバランスを解消できる

成人になると骨格的成長と歯並びが完成しているため、顎と歯の大きさの不調和を改善することができません。しかし、小児期は骨格の成長段階にあるので、その成長をコントロールすることで、顎と歯の大きさのアンバランスを解消することができます。

顎や顔貌の正しい成長を導く

小さい時から歯並びや噛み合わせが悪いと、噛む力のバランスが乱れたまま成長するので、顔貌が歪んでしまったり、顎関節症(がくかんせつしょう)になる恐れがあります。小児期に矯正を受けることで、悪い噛み合わせを修正できれば、顎や顔貌のバランスが整いやすくなります。

抜歯のリスクを減らせる

成人矯正治療では、顎の成長を促すことができないので、永久歯を抜いてスペースをつくりだす場合が多々あります。小児期から矯正治療を開始すると、顎の骨を柔軟に広げることができるため、抜歯のリスクを減らすことができます。また、Ⅱ期治療が必要になった場合であっても、歯を抜かずに治療する可能性が高くなります。

小児期に矯正治療を受けるメリット

1.顎顔面矯正(Ⅰ期治療)

歯並びが悪くなる主な原因のひとつは、歯の大きさに対して顎の骨が小さいことにあります。その原因となる歯と顎の骨のアンバランスを解決することが顎顔面矯正の目的です。顎顔面矯正は、顎の骨全体を正しい状態へと導くことで、永久歯が生え揃うためのスペースをつくり、不正咬合の根本的な解決を目指します。

顎顔面矯正のメリット

スムーズな鼻呼吸
上顎の成長を促して顎骨が大きくなれば、当然上顎の上に位置する鼻腔の容積も広がります。その結果、スムーズな鼻呼吸が可能となり、口呼吸を鼻呼吸に変えることができます。  
正常な呼吸、咀嚼、発音
舌の位置を改善できます。呼吸、咀嚼、発音を正常に機能させるには、上顎の正しい位置に舌が収まっていることが必要です。しかし、何らかの原因によって舌が上顎に収まらないまま発育すると、顎骨の形態が悪くなり、さらなる機能の異常を招きます。
健康なからだ作りにつながる
口呼吸から鼻呼吸に変わることで、病原菌の侵入を防ぐことで虫歯になりにくくなる、いびきが改善され睡眠の質が上がる、免疫力が上がり風邪やインフルエンザになりにくくなる、口ポカンがなくなり顔の印象が良くなる等のメリットがあります。
鼻でスムーズに呼吸し、しっかりと噛んで食べること。これらのことが正常にできないことで様々な問題が起きているお子様が急増しています。健康な身体のためには、顎顔面の発育が必要なのです。

顎顔面矯正で主に使用する装置

急速拡大装置

急速拡大装置

急速拡大装置は、上顎に装着して、上顎自体を大きくする固定式の矯正装置です。
装置の中央にはスクリューが付いており、そのスクリューを回転させることによって、矯正装置を広げていきます。装置を広げると、上顎骨中央の正中縫合部といわれる骨のつなぎ目が広がり、上顎の正しい発育が促されます。

リンガルアーチ

リンガルアーチ

上顎の拡大がすすむと、下顎の歯列も調整する必要があります。下顎には、主にリンガルアーチという装置を用います。下顎の骨は上顎とは違い、ひとつの骨で構成されているます。したがって、同じように拡げることができません。内側に傾いている歯を起こすようにして歯列部分だけを拡げます。 この装置も固定式で、歯の裏側に装着しますので、あまり目立ちません。

2.床矯正(Ⅰ期治療)

床矯正は、お子様の「成長する力」を利用することで歯が並ぶ土台となる顎の骨を拡げる矯正治療です。したがって、早期に治療に取り組むことがとても大切です。一般的には、小学生の低学年から始めるのが最適な時期です。成長期を過ぎて、乳歯が永久歯に完全に生えかわった後や、顎の骨の成長が完了した後では治療を開始することができません。

床矯正治療のメリット

取り外すことができる
床矯正の最大のメリットは、取り外しができるため、無理なく矯正を続けることが可能です。床矯正装置は1日14時間以上の装着が必要ですが、装着時間を守ることができるならば、学校にいる時間帯は矯正装置を外していても構いません。したがって、周りに気づかれずに矯正できます。食事の際は取り外せるので、普段どおりの食事が可能です。
永久歯を抜歯する可能性が低くなる
成人してから矯正する際に、歯が並ぶだけのスペースがない場合は、抜歯することが少なくありません。しかし、床矯正治療で、歯の土台となる顎の骨そのものを拡げておけば、多くの場合、歯を抜かずに永久歯を並べることができます。健康な歯を守るためにも、床矯正治療は有効だと考えております。
痛みが少ない
歯を支える顎の骨は成長過程にあるので、歯が動きやすく治療がスムーズに進みます。歯を動かす時の抵抗が少ないので、痛みも少なくなります。また、顎関節なども柔らいので矯正治療で得た新しい噛み合わせに無理なく順応できます。

床矯正治療の装置

拡大床・床矯正装置

拡大床・床矯正装置

床矯正で使用する装置は、拡大床あるいは床矯正装置と呼ばれ、歯を正しい位置に動かすとともに、歯の土台(骨格)そのものを最適な大きさに拡大します。この装置は、お子様自身で取り外すことができるので、食事や歯磨き、あるいは学校などの人前に出るときは装置を取り外すことも可能です。

3.マウスピース矯正(Ⅰ期治療)

マウスピース矯正は、筋機能矯正とも呼ばれ、マウスピース型の矯正装置を歯に装着することで、口腔周辺の筋肉を鍛えて歯並びを改善する矯正治療方法です。「歯を直接動かす」のではなく、歯並びを悪くしている原因(悪習癖など)を改善することで「間接的に歯並びを改善」していきます。

マウスピース矯正による歯列矯正方法

歯並びは、口周りの筋肉(頬・唇)と舌の力のバランスに応じて決定されています。このバランスが悪ければ歯並びは不正になり、バランスが良ければ理想の位置へ自然と並びます。
例えば、舌の力が強いと、舌が歯を前に押し出そうとします。唇の力が弱い場合は、舌が歯を前に押す力を唇が抑えられずに歯が前方へ押し出されます。しかし、唇の力が強ければ、舌が歯を前に押す力を抑えて(バランスがとれて)歯は動きません。
マウスピース矯正装置を着けると、舌を突き出すことや、舌で下の歯を前へ押すことができなくなり、舌を自動的に正しい位置に誘導します。さらに、唇や頬の筋肉を鍛えることで顔の筋肉を正しく発育させます。つまり、マウスピースを口腔内に装着していることで、口周りの筋肉を訓練しバランスを調整してくれますので、結果、歯が正しい位置に並んでいくことになります。

マウスピース矯正のメリット

お子様への負担が少ない
固定式の矯正装置は、構造上、多少の違和感や痛みを覚えることがあります。しかし、マウスピース矯正は違和感や痛みがほとんどありません。また、食事のときに装置を外せるので、お口のお手入れがしやすく、虫歯の心配が少なくなります。
治療後の後戻りが少ない
歯並びが悪くなる原因」そのものを改善することができるので、治療終了後の後戻りの可能性が低くなります。
将来的な費用をおさえることができる
マウスピース矯正治療後は、お口の環境が整います。したがって、本格的なⅡ期矯正が必要となった場合でも、治療の期間が短くなるなどの効果が期待できます。そのため、成人してから矯正を始めるよりも、矯正にかかる費用を抑えることができるでしょう。

マウスピース矯正の装置

マウスピース矯正装置

マウスピース矯正装置

マウスピース矯正は、固いプラスチック素材ではなく、ポリウレタン製の柔らかい素材でできています。したがって、装置をお口に入れることに抵抗感が少ないと言えます。また、オーダーメイドではないので、歯型を取る必要がありません。

Ⅱ期治療(成人矯正)

Ⅱ期治療は、歯を動かして正しい噛み合わせを獲得するための矯正です。歯列をキレイに並べるための矯正であり、全ての歯が永久歯に生え替わる13歳くらいから実施します。思春期に入る世代である中高生は、様々なコンプレックスを抱えやすい時期です。実際に、歯並びの乱れや不正咬合による外見的なコンプレックスが理由で、矯正治療を決断する方はたくさんいらっしゃいます。中高生のうちに矯正治療によって美しい歯並びや正しい噛み合わせを手に入れることは、自分自身に対する自信につながり、自然と笑顔も増えていくようです。また、正しい噛み合わせを得られることによって、歯磨きしやすくなり、虫歯や歯周病の病原菌から歯を守りやすくなります。もちろん、食べ物がしっかりと噛めるようになれば、身体の内面からも健康になります。

中高生の歯列矯正の利点

中高生の時期は、子供から大人の身体へと成長中の時期で、矯正治療をスムースに短期間で行える、またとないチャンスです。顎の骨や歯肉などの歯周組織の代謝が活発なため、歯の移動がスムーズであり、歯肉も整った歯並びに調和した形に変化させやすいと言えます。

中高生の歯列矯正の利点

もちろん、矯正治療は成人してからでも可能です。最近は、20代から40代の方を中心に子どもの頃から抱えていた歯並びのコンプレックスを解消するために歯列矯正を希望される方が増えています。矯正治療によって、歯並びが整うことで、美しい口元を手に入れることができます。美しい口元は魅力的な笑顔を引き出し、その人の印象をより良いものにしてくれるはずです。もし、歯並びにコンプレックスを抱き、悩んでいるなら、一歩前進してみてはいかがでしょうか。白いセラミック矯正装置だけではなく、マウスピース矯正装置を用いた目立たない矯正治療にも対応していますので、安心してご相談ください。

成人の歯列矯正の利点

成人の方は、自らの意思で矯正治療を決断します。そのため、矯正装置の管理や歯磨きなどに気を配ることが可能であり、お口の環境が良好に治療を進めることが出来るという大きなメリットがあります。ただし、中高生の方と比べると歯の移動に時間がかかります。歯は力を加えると移動していくのですがその際、歯をささえる骨が吸収・添加といった代謝を起こします。この代謝スピードが落ちてしまうからです。

成人の歯列矯正の利点

マウスピース矯正(Ⅱ期治療)

矯正治療を受ける事を躊躇していた患者様のお話を伺うと、ブラケット&ワイヤー矯正装置を歯に着けることに抵抗があるという意見をたくさん耳にしました。この矯正用マウスピースであるインビザラインをつかった歯列矯正は、その悩みを改善する事が出来る矯正システムです。
マウスピース矯正は、歯の形に合わせたマウスピースを使って歯並びを改善する矯正治療のことです。治療計画に基づいて、矯正箇所を微細に変えたマウスピースを複数製作し、1週間ごとにマウスピースを交換しながら理想の歯並びにしていきます。

マウスピース矯正システム

マウスピース矯正システム

インビザラインは、歯科医の治療計画に基づいて製造されるマウスピース型の矯正装置です。これまでに全世界で500万人を超える方がインビザラインで治療を受けています。カスタムメイドされたマウスピースを1週間に1度交換して頂くことにより歯を徐々に動かしていきます。目立たない矯正をご希望される方へオススメの最新の矯正治療です。

インビザライン矯正のメリット

目立たない
透明なプラスチック素材のため装着しても、あまり目立ちません。また、マウスピース自体がとても薄く、発音の邪魔になりません。接客業や営業職など人前で話す機会が多い仕事をされている方に好評を得ています。
取り外しできる
取り外しができるので、食事はいつも通りしていただくことができます。もちろん、取り外して歯みがきが出来るので、歯の隅々にまで歯ブラシが届き、口の中を清潔に保つことができます。
痛みが少ない
弱い力で歯を動かしていくので、ワイヤー矯正時の調整直後に起きる痛みがありません。新しいマウスピースに交換した直後は、締め付けられるような感覚(痛みと違和感の間くらいの感覚)がありますが、およそ数時間で消失します。

インビザライン矯正のデメリット

症例に制限
すべての矯正装置には、それぞれに向き不向きがあります。マウスピース単独での治療が難しいケースもあるのは事実です。
患者さんのモチベーションに左右される
1日のうちで22時間以上、マウスピースを装着しておく必要があります。マウスピース装着は、患者様自身が行うため、マウスピースの装着をさぼると必然的に治療期間が延びてしまいます。

ブラケット&ワイヤー矯正(Ⅱ期治療)

ブラケット&ワイヤー矯正装置は、最もオーソドックスな装置です。歯にブラケットという装置を接着して、そこに弓形をしたワイヤーを通して、ワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して歯を動かしていきます。
ブラケットの役割は、歯にワイヤーの力を均一に与えることです。ワイヤーが外れると治療効果が期待できないので、ブラケットからワイヤーが外れないように、ゴムなどでしっかり固定させる必要があります。
ワイヤーの形態やサイズを月に1回程度調整あるいは交換しながら、少しずつ歯を動かして理想の歯並びに近づけていきます。

ブラケット&ワイヤー矯正の装置

セラミック製ブラケット

セラミック製ブラケット

セラミックブラケットは、歯の色に近いため、金属製ブラケットに比べて、目立たずに治療をすすめることができます。目立たない矯正装置を希望される方に適した装置と言えるでしょう。

セラミック製ブラケットのメリットとデメリット
  • セラミックは、白色で歯の色となじみやすく、表側矯正であっても、装置が目立たない
  • 外科的アプローチが必要な症例を除いて、ほとんどの不正歯列に対応できます
金属製ブラケット

金属製ブラケット

金属製ブラケットは、薄くても丈夫なので、矯正期間中に破損の心配が少なく、非常に取り扱いやすい装置です。

金属製ブラケットのメリットとデメリット
  • 食事後の食べかすやプラークなどの付着がわかりやすく、お手入れがしやすい
  • 金属製ブラケットの矯正は、症例研究も多く報告されており、十分な臨床実績があります

ブラケット&ワイヤー矯正装置の治療期間

治療期間は、患者様の年齢・歯並びの状態・治療方法によって大きく異なりますが、永久歯列完成後の治療期間はおよそ2年程度の症例が多いと言えます。抜歯が不要な症例の場合は、半年~1年程度で終わる方もいらっしゃいますが、歯を大きく動かす症例は3年程度必要なこともあります。その後、歯が後戻りしないように保定する期間が必要です。

保定期間について

理想の歯並びを手に入れた後は、その状態を維持することが必要です。矯正終了後は、顎の骨が柔らかい状態になっているので、放っておくと歯が元の状態に戻ろうとする「後戻り」という現象が起きます。この「後戻り」を防ぐためには、リテーナー(保定装置)を使用する必要があります。リテーナーは、歯並びを固定するように設計されており、矯正治療で移動した歯が安定するまでの間、継続して使用します。